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いまやカウカウファイナンスの丑嶋、といえば山田孝之の顔がぱっと思い浮かぶほどの当たり役となった「闇金ウシジマくん」シリーズ。TVシリーズSeason 1、映画版Part 1、TVシリーズSeason 2、それに動画配信限定のスペシャルドラマ......どれもズバ抜けた面白さを誇るピカレスク・ロマンだが、この映画版Part 2は演出、脚本ともに、それらの頂点といえる出来だ。

それ以前に、これだけの面子を揃えればつまらなくなりようがない、ってぐらいのキャスティングが凄い。ウシジマによって半殺しの目から救われながらも、いい気になって平然と裏切りカウカウファイナンスを危機に陥れる逆恨みヤンキー・菅田将暉。今どき冗談のような金髪リーゼントで、おそらくまだ小学生の舎弟どもを従えて悦に入る暴走族・中尾明慶(間違いなく今、やっす～いチンピラがいちばん似合う俳優だ)。そんな稼ぎのない亭主に愛想尽かしながらもホスト狂いする乳児の母・木南晴夏。自堕落な母親みたいになるまいとする意志を間違った方向に働かせ、ホストクラブNo.1の座を射止めるべく躍起になる売れないホスト・窪田正孝。リストラされてから働かぬ父親に疎んじられ、窪田に貢ぎたい一心でシロートAVに出演するウェイトレス・門脇麦(『愛の渦』に続き、彼女が出てくるだけで画面の空気が変わる存在感！)。借金が嵩み、医療廃棄物処理場に送り込まれながら門脇を勝手に見初めてつけ狙う、頭の中は怒りが渦巻く変態ストーカー・柳楽優弥。ウシジマに理不尽なまでの敵愾心を抱き、ヒステリックに怒鳴りまくるライヴァル闇金の女経営者・高橋メアリージュン(こんなに狂いまくったキャラだっけ？という意外性で、本作一番のめっけもの)。

さらにTVシリーズSeason 2に続き、ウシジマとは幼馴染の情報屋役で綾野剛が参入(この猛獣たちの中にあっては損な役回りだけど)。ともかく、今の映画・TV界を支えているといってもいい錚々たる面々が、そろって心にぽっかり空いた漆黒の暗闇をさらけ出し、ぶっ壊れた演技を競い合うのだ。ほとんど「オール怪獣大進撃」状態で迫りくるこのクズどもに、ほぼひとりで対峙する山田孝之はさしずめ怪獣王ゴジラである！......ま、これってどこかしら、現在の若手俳優陣のヒエラルキーをみるようでもあるが。

ここでしっかり評価しなきゃならないのが、脚本にも名を連ねる山口雅俊の演出力。もともとTV界の才能だが、怪獣たちが跋扈する複数のエピソードを同時進行させながらも、混沌とした物語を捌ききる手腕はお見事。画面のクオリティもTV版より相当高く、大画面でしっかり物語を見せる、という意思が劇場版前作に続いて読み取れる。ま、「こんなことしたら、こんなヒドい運命が待ってますよ～」的な、反面教師的道徳映画の側面も大きくはなったものの、ここまで毒々しさが弾けてればクサさをほとんど感じない。いや、もっと存分に毒撒き散らしてくださいよ、丑嶋社長。

text: Milkman Saito