honeyee.com｜Web Magazine「ハニカム」

「インサイド・ルーウィン・デイヴィス　名もなき男の歌」は1961年、NYグリニッジ・ヴィレッジを舞台に才能はあるのに運のない、フォークシンガーのルーウィン・ディヴィスと猫の愛おしい日々を綴った物語。一部の若者たちの間でフォーク・シーンを下支えしたミュージシャンの一人であり、「彼なしにはボブ・ディランの成功はなかった」と言われるほどボブ・ディランが憧れたディブ・ヴァン・ロンクの回想録をベースに、『カントリー』のコーエン兄弟が自由に脚色。ルーウィンの孤独とひたむきに生きる人生を珠玉の名曲の数々と柔らかく美しい映像で描き出している。

ストーリーは、人々を魅了する歌声を持ち歌い続けながらも、歌の世界でなかなか芽が出ないシンガー、ルーウィンの1週間を追う。とことんツキに見放されて情けなく、どうしようもない彼の1週間は、ニューヨークだけでなく、その後日本を含む世界中の音楽シーンに影響を与えることとなる。フォークソングの新時代を築くこととなるボブ・ディランの誕生と、一瞬時を重ね、またすれ違っていく。そんな時代のはざまに生きた男の哀愁とその運命の皮肉。この情けない男の1週間は、実は「一つの音楽の時代が切り替わる瞬間」への立会いだったのだ。

本作では、『ドライヴ』でを演じたオスカーアイザックが初主演に挑戦し、見事な演奏と歌唱力で一躍脚光を浴びた。ジュリアード音楽院出身の彼は、演奏シーンをすべて編集なしのライブ収録で挑み、見事なギタープレイと歌声を披露。共演は、『華麗なるギャッツビー』のキャリー・マリガン、『ソーシャル・ネットワーク』のジャスティン・ティンバーレイクと豪華な出演陣が続く。移り行く時代を鮮やかに切り取ったラストは、観客に深い余韻を残すだろう。

今回、特別試写会にハニカム読者5組10名様をご招待。どしどしご応募ください！

text: Aika Kawada