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ヤング≒アダルト

ヤング≒アダルト

毒があるのになぜか温かい、
感動のヒューマンドラマ。

12 3/21 UPDATE

監督ジェイソン・ライトマン&脚本ディアブロ・コディ。そう、あの『JUNO/ジュノ』を作った新世代インテリ・コメディ作家と元ストリッパー・サブカル姉御コンビの新作である。前作は高校生女子の妊娠と出産を、リアリスティックながらも機知に富んだやり方で描いた快作だったが今度はどうか。ま、いってみればジュノとは真逆のタイプの、キラキラモテモテな学園の高嶺の花的アイドル女子が、そのうわついた精神状態のまま、まったく大人になれずに馬齢を重ねアラフォーになったら......という、いかにも意地の悪い発想の映画なんである。

んでそのどうしようもない最悪の勘違い女を、誰が見たって完璧な美女なのにそれに飽き足らず、やたらと汚れ役ヘンな役ばかり演じたがり、オトコからすると「そんなの演らなくたって、美しいままスクリーンで輝いててくれたほうが嬉しいのに」と思わぬでもないのだが、やたら演技力はあるもんでつい引き込まれ、抵抗はあるものの結局納得させられてしまいはするものの、ディオールの広告などではクラシカルでゴージャスな持ち前のスタア性をためらいなく見せつけて、「おい、お前いったいどっちやねん!」と突っ込まずにいられないという困ったちゃん、シャーリーズ・セロンが嬉々としてやってるんだからイタガユさも倍加するってわけだ。

そんな彼女が今回扮するのは、メイヴィス・ゲイリー、バツイチ37歳、自称・作家。実はヤング・アダルト学園小説の、表紙には名前も載せてもらえないゴースト・ライター(しかもシリーズは終了し、もうすぐ仕事ゼロ状態)。夜な夜な酔って帰ってはそのままベッドに沈没し朝を迎えると1リットルコーラをガブ飲みするという自堕落オンナだ(ただし本人には自覚なし)。

そんな彼女のPCにメールが届く。そこには見知らぬ赤ん坊の写真が添付されていて、差出人を見るとなんと高校時代の元カレ・バディ(パトリック・ウィルソン)から。子供の誕生パーティの案内状だったが、あの時のワタシたちは、誰もがうらやむ理想のカップルだった、バディはワタシとヨリを戻そうとモーションかけてるんだわ、と勝手に解釈、愛犬をバッグに押し込んで、昔バディにもらった「特別編集カセット」のティーンエイジ・ファンクラブを繰り返しかけながら、ミニ・クーパーで故郷へと走るのである。ハロー・キティのTシャツ姿で(笑)。

いや、もう、ひたすら痛すぎる。バディにメイヴィスへの下心など微塵もないのは、観客すべてに明白だ。田舎町で堅実な生活を営もうとしているバディ(と奥さん)はとっても「イイ人」で、ま、それだけに詰まらなくもあるのだが、キンキラのカップル時代しか頭の中に残っていないメイヴィスには、その詰まらなさが奥さんの檻に閉じ込められているからだとしか思えない。そんなタワゴトを真顔で語る彼女に呆れながらも付き合ってやれるのは、同級生でロッカーが隣だった(だけどメイヴィスに記憶なし)小太りオタク男、マット(パットン・オズワルド)だけ。マットは脚に障害があるのだが、それは高校時代、体育系男子にホモだと断定されてヒドいリンチを受けた後遺症なのだった。

経年劣化は否定できないとはいえ、その破壊的なファッション・センスを無視すればなんとか許せる美貌を保っているメイヴィス。他人に対してやたら乱暴な態度といい、"都会の売れっ子作家(といってもミネアポリスだが) "風を吹かせまくる上から目線といい、17歳で成長が止まった"自尊心だけ女"ぶりを見事に演じるシャーリズには、やはり「キレイな役だけ演ってりゃいいのに」とちっとは思いはするものの、巧いんだから仕方がない。

果たしてメイヴィスに幸せは、そして成長は訪れるのか?? ディアブロ姐さんの用意する結末はこれまた微妙、そして意地悪、しかも軽やか。優しささえ感じさせるのである。

text: Milkman Saito

原題: YOUNG ADULT
出演: シャーリーズ・セロン、パットン・オズワルト、パトリック・ウィルソン、エリザベス・リーサー
監督: ジェイソン・ライトマン
脚本: ディアブロ・コディ
上映時間: 94分
配給: パラマウント ピクチャーズ ジャパン

TOHOシネマズシャンテほか全国ロードショー中
http://www.young-adult.jp/

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