honeyee.com｜Web Magazine「ハニカム」

先日、1年間の休業を発表した「アダム キメル（ADAM KIMMEL）」。事実上のラストコレクションとなるカーハートとのコラボレーションライン「アダム キメル カーハート（ADAM KIMMEL carhartt）」は、フォレストレンジャーからイメージされるアウトドアスタイルを、ダークグリーンを中心に構成した深みのあるカラーパレットに彼らしいネイビーなどを差し、落ち着いたバランスでまとめている。その一方で、ルックブックでは写真家アリ・マルコポロス（ARI MARCOPOULOS）を起用した、ユーモアの効いたビジュアルを発表している。

アイテム単体については、これまで通り、アメリカを代表するワークブランドである「カーハート（carhartt）」の質実剛健な魅力を活かしながら、より上質な素材と適度なファッション感を加えたシルエットが魅力となっている。

こちらの2点は、その傾向を分かりやすく物語る、シーズンを象徴するピースである。ルックでも強いインパクトを放ったグリーンのワークコートは、文字通り、ワークウェアのタフさとファッション性を見事に兼備したスタイル。外見とは裏腹にとても柔らかなキャンバスとコーンアーム、着脱的なフードなどがポイントで、アウターとしてのボリューム感もある。続いて、ジャケットは、ウールとナイロンを混紡したウールフェルトを使用した一品。お馴染みの金ボタンに浅めのサイドベンツといったディテールは、いかにもこのコラボレ―ションらしいアレンジだといえる。

モードの世界において、リアリティとファンタジーを絶妙に織り交ぜながら新しいラグジュアリーを提案し続けた「アダム キメル（ADAM KIMMEL）」の創造性が、充電期間を経て、さらなる進化へと向かう...。そんなターニングポイントにふさわしい、抜群の完成度のメモリアルなコレクションとなった。

photo: Masaki Sato
text: Tsuneyuki Tokano