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「ジェフリー・B・スモール」は、1990年代に一世を風靡した知る人ぞ知るファッションデザイナーである。1979年から活動をはじめ、一流のテーラーとして活躍の場を広げ、90年代のグランジブームの最中、古着のリメイクに着手し、日本でも多くのファンを集めた。その後、長きに渡る沈黙をやぶり、ついに再始動した。

復活したコレクションは、まさに彼のキャリアの集大成と呼べるもの。大量生産・大量消費、またはファッションにおけるコマーシャリズム、それらに対するアンチテーゼとして、すべてのアイテムはハンドメイドで製作が行なわれている。

こちらに並ぶピースも従来のファッションアイテムと大きく異なる観点からつくり出されている。ベースとなる衣服は、いわゆるヴィンテージ市場の価値観を基準にせず、デザイナーが独自のリサーチから入手した古着である。そこに、パッチワークや染色、ヴィンテージや純銀製のボタン、オールハンドのボタンホール、外観と同等かそれ以上にこだわり抜いた内側の仕様など、通常ではまずありえない手間のかかる作業工程を経ることで、それぞれのピースを完成させている。そのためロットはごく少数で展開され、当然ながら同じものはひとつたとりともない。

テーラリングからリメイクまで、ファッションの製作に関するあらゆるテクニックを駆使してつくり出される新生ジェフリー・B・スモールのコレクションは、コピーブランドの対極に位置し、唯一無二のクリエイティビティに溢れている。

text:Tsuneyuki Tokano
photo:Masaki Sato