11 11/15 UPDATE
書店にて、バンド・ロゴがテキスタイル・パターン調に配置された装丁に目を引かれ、僕はこの本を手に取った。開いてみて、あれっと思った。見開きページに、複数の人物写真が並んでいる。音楽ファッションのようではあるが、ミュージシャンには見えない人々が、見開きごとに「その傾向」を変化させながら、つぎつぎに登場する。ロバート・スミスのような化粧をした連中が並んでいるページに至って、ようやく僕は気がついた。これはつまり、「あらゆるポップ・ミュージックのファン」を、コンサート会場でつかまえて、撮影をした写真集なのであった。秀逸なアイデアであり、そして、かなりおかしい。
著者のジェームズ・モリソンは、約3年間をかけて、「いろんな音楽トライブ」の写真を撮っていったのだそうだ。見どころは、いろいろある。50セント、ローリング・ストーンズなどは、あからさまに「服装を見ただけ」で、なんのファンなのかわかる。レディオヘッドのファンが、線が細い文系男子で、セーターを好むということもわかった。オアシス・ファンがジャージの上着をきてガン飛ばす習性があることも、わかった。ドリー・パートン・ファンの女性もインパクト大なのだが、僕はやはり、ロッド・スチュワートのファンを一位に挙げたい。いろいろな体型の、中年をとっくに越えた年齢の男たちがずらっと並んでいるのだが、いかなる困難があろうとも、全員やはり、あの「ロッドの髪型」でキメようとしている様は熱い。序文を寄せているのが「裸のサル」のデズモンド・モリスでもあり、人間行動学、文化人類学的な資料として本書を見ることも、できるのかもしれない。
などと楽しみつつも、「ではかつての自分はどのように分類されていたのだろうか」と、しばし考え込んでしまった。「服装や髪をキメて、コンサートに行った」経験がある人なら、他人事ではない一冊が、「信徒たち」と題されたこの写真集なのではないか。
ずいぶんむかし、自分ではファン・ボーイ・スリーのつもりだった髪型を、理解のない友人連中から「白菜」呼ばわりされた、という過去を唐突に思い出してしまった。
text:Daisuke Kawasaki(Beikoku-Ongaku)
「The Disciples」
James Mollison・著
(Chris Boot)洋書