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世界の夢の本屋さん

世界の夢の本屋さん

目で見る世界の「夢の」本屋さん

11 8/23 UPDATE

書名のとおり、世界各地の「夢の」書店をめぐり、店の外観や内装を撮影して、掲載したものが本書だ。各書店のオーナーやスタッフのインタヴューも掲載されているから、目で見る世界の「夢の」本屋さん選集という趣きだ。EUからはパリ、ローマ、ミラノ、ロンドン、アムステルダム、ブリュッセルほか、アメリカからはマンハッタンとブルックリンから、それらの書店は選ばれている。たしかにこれは、訪れると楽しそうなお店がいっぱい並んでいる。

ところで、なにが「夢の」と形容される所以なのだろうか? まず第一に、店のサイズが「大きい」あるいは「建築や内装が特徴的」だという点で、目立った個性をそなえている書店が、ここでは最初に選ばれているようだ。まるで国立図書館のような威容を誇る、ロンドンのドーント・ブックス・マリルボーンなど、その典型だろう。インテリアやショップ・デザインに興味がある人は必見の一冊なのではないか。その意味で見逃せないのが、ル・メルル・モケールのサンキャトル店における書棚のサインだ。このような形で「文学」などと示すようなセンスは、フランス人にしかないのではないか? そのほか、パレ・ド・トーキョーやロンドンのマグマなど、僕が作った雑誌を置いてくれていたお店や、それらの店に納品をしながらも、一度たりとも売掛金を支払わなかった極悪ディストリビューターOFRが経営するお店なども──ひさしぶりに眺めることができた。

本書の弱点を述べるとしたら、やはり「各書店の商品構成がわかりづらい」ということに尽きるだろうか。書店をこれだけカタログ化したならば、在庫の内容にももっと言及してほしかった。これら個性的な書店のスタッフが、いかなる観点で商品を選び、日々それをあつかっているのか──つまり、「棚の中身」について、できるかぎりくわしく知りたい。第二弾ではそれをお願いします。 

あわせて、このような「夢の」書店が育つことがひじょうに困難な日本という国の事情についても考えざるを得なかった。再販制度が諸悪の根源だと、ずっと前から僕は言いつづけているのだが。ここにラインナップされて然るべき書店が、日本にだっていっぱいあるよ、と言えるような日が、いつかやってくるという予感が全然しない、というところが、やはり悲しい。

text:Daisuke Kawasaki(Beikoku-Ongaku)

「世界の夢の本屋さん」
(エクスナレッジ)
3,990円[税込]