10 12/15 UPDATE
本書はその書名どおり、都内200箇所以上の「駅近喫煙スポット」を略図つきで紹介する、というもの。ポケット・サイズで、出張や外回りのお供にどうぞ、ということなのだが、しかし......これを持って歩いて、地図を見ながら喫煙場所を探す人がそもそもいるのか?という疑問もある(アプリで出すべき企画では?)。にもかかわらず、ぱらぱらとやっていると、意外に(?)面白い。いろいろなことを考えさせられる。
そもそも、恩賜の煙草の例にあるように、国家ぐるみで煙草を庶民に広めていたのが日本という国だった。にもかかわらず、本書の地図のなかに印されたピンポイントでしか「喫ってはならない」とするなんて、いやはやとんでもないファシズム国家なのだなあ、としみじみせざるを得ない。僕は嫌煙運動の本場、カリフォルニア州において、「クラブやバーも全面禁煙」となった時期に、同地をうろうろしていたことがある。「店のなかはダメ」なので、クラブなどでは、みんな手の甲にスタンプ押してもらって、エントランスのすぐ外で喫煙して、そこに喫い殻を捨てては、店内へと戻っていた。そのころの噂では、「路上で喫ってはいけない」とされたのはイーストウッドが市長だったことで知られるカーメルだけで、「こわいよね、あそこ」と、みんなが言っていた。「警察が支配しているみたいだよね」と。
店舗での喫煙を禁止するずっと以前の段階で、なぜか天下の大通りにおいて、それをいっせいに規制する、という姿勢。「弱い者にだけ強圧的になる」という考え方──そして、「ある日突然」だれかが決定した「きまりごと」にしがたって、街の様相が平気で一変してしまうのがこの日本という国なのだなあ......ということが、この小さな本からしみじみとつたわってくる。そうした観点から見た「東京不自由マップ」「日本国の人民管理マップ」としても、これは面白い一冊かもしれない。これから何十年も経ったあと、つまりまた新たなる全体主義が完成して、そして崩壊したあとなどに眺めなおしたら、「ああ、あったあった」と、ひじょうに楽しめる一冊となるのではないか、という気もする。
text:Daisuke Kawasaki(Beikoku-Ongaku)
「最新版 東京喫煙所マップ」
東京喫煙愛好会 ・著
(PHP研究所)
350円[税込]