09 12/14 UPDATE
「やばい」「ああやばい」とページを繰るたび口に出してしまうのだ。だってかっこいいんだもの。すげえクール!なんだもの。「物体」としてのラジカセの、その美をこれでもかと押し出した、世界初の「日本製ラジカセ写真集」が本書。そしておそらく、最初にして究極の一冊となるはずの名著がこれだ。
いやなにしろ、写真が素晴らしい。一台一台の個性にあわせて、アングルやシチュエーション、寄ったり引いたり、その魅力を可能なかぎり引き出そうとしている。それぞれのモデルに対するキャプションも簡潔にして的確。とくに巨大系のラジカセを集めた章など、じつにエキサイティング! そして我々は知ることになる。「家電としての意味」をはるかに超越した機能とデザイン、まるで合体ロボのような、これらマッシヴな形状をもつ製品たちには、すでにして神話が宿っていると。かつて、アメリカン・マッスルカーという工業製品が、そうした運命をたどったように。
著者は自らラジカセのレストア・ショップも経営、有名なコレクターでもある人物。いわく、ラジカセの最大の魅力は、その「重さ」なのだという。また、その「大きさ」も重要なのだという。がっしりした「メカ」だから、的確なメンテとチューニングで、末永く動き続けるところが愛しいのだという。これぞまさに箴言。
本書の最大の問題点は、読んでいるうちに、ラジカセがほしくってほしくってたまらなくなる、ところか? あるときはブームボックス、あるときはゲットー・ブラスター。そんな名で呼ばれ、世界を席巻した「ラジカセ」。それは高度経済成長期の日本が生み出した、ストリート・レベルの世界遺産なのだなあ、ということを実感させてくれる、楽しい(危険な?)一冊だ。
Text:Daisuke Kawasaki(beikoku-ongaku)
『ラジカセのデザイン! JAPANESE OLD BOOMBOX DESIGN CATALOG』
松崎順一・著
(青幻舎MOGURA BOOKS)
1,680円[税込]