09 4/02 UPDATE
国際的に見て、日本男子の一大特徴のひとつは、「戦国武将なら誰が好きか」ということを、生涯に一度ならず考えたことがある、ということではないか。そんな外国人の話は聞いたことがない。関羽を信奉する中国人なら、多少は話が合うのか?(違うか?)──ともあれ、好きな武将が「信長」なのか、「秀吉」なのか、「家康」なのか、つい「直江兼次」と答えてしまうのかによって、わりと人間見られてしまうようなところが、我々の社会にはある。
そんな日本男子の基礎教養として、押さえておいて絶対に損はないのがこの漫画。週刊ヤングマガジンで「センゴク」シリーズを連載中の著者が、同作のプリクウェルとして発表しているのが本作。現在二巻までが発売中なのだが、これはもう本当に面白い。「戦国時代は、何故始まったのか?」「戦国武将とは、何だったのか?」というでっかい問いに、正面からずばずば切り込んでゆく内容。血沸き肉踊る活劇漫画としても秀逸ながら、まず第一に、上記の「問い」について追求の手をゆるめない点が、これまでの「戦国時代漫画」と一線を画する。
そもそも、いま生きている人間で戦国時代を見てきた人はいない。であるから、「どう調べるか」ということが、その作品の価値を決定づける大きな要因となる。「センゴク」シリーズ本編でもそうだが、著者はあらゆる「通説」に挑戦を試みる。「武田騎馬軍団も、戦うときは馬から降りた」と言われれば、あの映画やあの小説は、あれは何だったの?となること必至。
そして本作では、「戦国時代とは、小氷河期の到来からはじまった」という大振りからストーリーが展開。桶狭間の戦いまでが描かれてゆく。「金融業者の登場が戦国武将を育てた」とか、まるで現代日本とほぼ同じ、「カネ・力・票」を集める悪党が群雄割拠する世界が見えてくる。第二巻ではついに信長が家督を継ぎます!
Text:DAISUKE KAWASAKI (Beikoku-Ongaku)
『センゴク外伝 桶狭間戦記2』
宮下 英樹
(講談社)
730円[税込]