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スペクトラム − いまを見つめ未来を探す

スペクトラム − いまを見つめ未来を探す

ボーダレスな世界を見通す4人のアーティスト

15 9/28 UPDATE

テクノロジーが発達したおかげで、かつてはきっちりわかれていたものの境界線があいまいになってきている。絵画、彫刻、映像、音楽の区別なく、領域を自在に行き来するアーティストは多い。スパイラルの30周年を記念して開かれる「スペクトラム」展はそんなボーダレスな状況に目を向けた展覧会。4人の作家が参加する。展覧会のタイトルは、三角形のプリズムを通じてできるスペクトラムには、色と色の間の境界線がないことから名付けられた。

栗林隆は放射能の除去作業に使われるフレコンバッグで空間を区切り、その中央にシャンデリアを置いたインスタレーションを展示する。シャンデリアにはアインシュタインの言葉が綴られているのだが、文字は内側を向いていて読みづらい。見えているけれど意味がとりにくい言葉の羅列は、怪しい光と相まって謎めいたエネルギーを感じさせる。

榊原澄人はドーム状のスクリーンに投影したアニメーションを見せる。天球を星が巡るように回転する映像は、世界のあちこちで起こる出来事がすべてつながっている様子を現す。無数の私たちがうごめく映像に、生死を超えた時間軸が漂う。

高橋匡太はスパイラルが開館した30年前から今までの流行色を光の帯で表現し、観客が歩いていくと光の色が表情を変えるインスタレーションを展示する。さまざまな色に染められた空間を見ながら自らのこれまでを思い起こして見ると、ちょっとセンチメンタルな気分にもなる。移ろう感情や印象に形を与えるアートだ。

生きているような機械仕掛けのオブジェを作っている毛利悠子は、使われなくなった街路灯をスパイラルに持ち込む。横倒しになった街路灯の根元からはケーブルが伸び、その先は空き缶のキューブへと続く。見えないエネルギーによって社会が息づいていることを意識させ、無機質であるはずの工業製品や廃棄物が巨大生物の化石や古い社のように見えてくる。

30年前の1985年と今を隔てるものは何か、30年の間に私たちはどう変わってきて、これから何を作っていくのか。空間に大胆に切り込むアートが時代の様相を切り取り、見る者に未知の力を注ぎ込む。

text: Naoko Aono

「スペクトラム − いまを見つめ未来を探す」
会期:2015年9月26日〜10月18日
会場:スパイラルガーデン、スパイラル5F
東京都港区南青山5-6-23
tel: 03- 3498-1171
11:00~20:00
無休
入場無料
http://www.spiral.co.jp/spectrum

1髙橋匡太 参考作品
『ライティングプロジェクション』(2013)豊田市美術館 Photo:Seiji Toyonaga
2毛利悠子 参考作品
『アーバン・マイニング──「春の祭典」のための』(2014)東京芸術劇場ホワイエ Photo:Yohta Kataoka
3栗林隆 参考作品
『INVISIBLE』(2013) Chelsea College of Art and Design,London UK
4榊原澄人 参考作品
『Solitarium』(2015) イメージドローイング