honeyee.com|Web Magazine「ハニカム」

Mail News

大竹伸朗

大竹伸朗

瀬戸内に集積する大竹伸朗の遠い過去から未来まで。

13 7/22 UPDATE

2006年、東京都現代美術館での個展「全景」ですべてを出し切ったかに見えた大竹伸朗。巨大なスペースを埋め尽くす作品群は圧巻だった。が、もちろんこれで終わり、などというはずがない。香川の二つの美術館での個展にも怪しいエネルギーがほとばしる。一方は回顧展、もう一方は新作を中心にしたものだ。

高松市美術館で開かれている『憶速』は回顧展的なもの。といっても年代順ではなく、これまでとは違う切り口での展覧会だ。古いものでは大竹が子供の頃に撮った写真まである。8ミリフィルムによる80年代の未公開動画と未公開の立体作品を組み合わせたセクションでは、実体のない映像と実体のあるオブジェという異なる種類の記憶が組み合わされる。コラージュは大竹の得意とする手法だけれど、時間とともに移り変わっていくものと動かないものとのコラージュが空間を侵食していく様が面白い。そのほかのシリーズの未発表作品や日本の観光地の絵はがきを描いた新作も展示。回顧展的とはいえ、見たことのない大竹伸朗が現れる。

もう一つの個展『ニューニュー』は丸亀市猪熊弦一郎現代美術館で開催中。タイトルから想像できる通り、新作展だ。昨年の「ドクメンタ」で森の中に展示した、スクラップブックを内包した小屋《モンシェリー:自画像としてのスクラップ小屋》は今回、展示室の中に出現する。《時憶》は大竹が2011年から始めた新シリーズ。廃業したボーリング場のサインとして使われていた巨大なボーリングピンによる高さ約10メートルもの立体作品《時憶/美唄》、その他グワッシュを用いた平面の新シリーズ《境界色》など約150点の作品から構成される。美術館のファサード上には「宇和島駅」のネオンサインが取り付けられ、美術館が別のものに変容する。より巨大に、より密度を増してきた大竹の進化形を見せてくれる。

高松からアクセスできる女木島には「瀬戸内国際芸術祭2013」の参加作品として新作《女根/めこん》が作られた。休校中の小学校の中庭に大きなブイ、ヤシの木、ワニのオブジェ、怪しげなネオン、そのほか謎のオブジェがひしめきあう。植物や作品が島に「根」づき、生長しながら変化していく作品だ。

ゆったりとした時間の中、南国の強い光を浴びていると大竹作品も都会とは違って見えてくる。ときに疾走し、ときに時間をさかのぼっていくような不思議な感覚が味わえる。

text: Naoko Aono

『憶速』
開催中~2013年9月1日
高松市美術館
香川県高松市紺屋街10−4
tel. 087-823-1711
9:30~19:00(日曜、8月10日~17:00)会期中無休
入場料1,000円

1大竹伸朗《真夜中の珊瑚》 2010年
©Shinro Ohtake / Courtesy Take Ninagawa


『ニューニュー』
開催中~2013年11月4日
丸亀市猪熊弦一郎現代美術館
香川県丸亀市浜町80−1
tel: 0877-24-7755
10:00~18:00 会期中無休
入場料950円

2大竹伸朗《モンシェリー:自画像としてのスクラップ小屋》2012年[dOCUMENTA(13)での展示風景/細部 写真:山本真人]
all images©Shinro Ohtake


《女根/めこん》
『瀬戸内国際芸術祭2013』参加作品
女木小学校(女木島)
7月20日~9月1日(夏会期)、10月5日~11月4日(秋会期)
9:00~16:30 ※夏会期中の金・土・日および8月12~15日は9:00~20:30 会期中無休
鑑賞料500円

3大竹伸朗《女根/めこん》2013年

※《女根/めこん》は『瀬戸内国際芸術祭2013』作品鑑賞パスポート(夏会期:一般4500円)提示で無料、『ニューニュー』展は『瀬戸内国際芸術祭2013』夏会期と秋会期中は同芸術祭の作品鑑賞パスポート提示で割引に。