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「パラの模型 / ぼくらの空中楼閣」パラモデル展

「パラの模型 / ぼくらの空中楼閣」パラモデル展

パラモデルが読み解くレンゾ・ピアノの建築。

13 3/06 UPDATE

床も壁も天井も、プラレールで縦横無尽に埋め尽くしたインスタレーションで人気のアート・ユニット、パラモデル。今銀座のメゾンエルメスで開かれている展覧会はレンゾ・ピアノ設計の建物を彼らの解釈で読み直したインスタレーションだ。会場はパラモデルのメンバーである林泰彦と中野裕介が担当するエリアにゆるやかに別れていて、それぞれ建物を異なる方向から解読している。

林泰彦のジャングルジムのようなオブジェは、メゾンエルメスを覆うガラスブロックの大きさと同じ45センチ角。エルメスのカレの4分の1の大きさだ。ジャングルジムごしにガラスブロックの壁を見るとそれぞれの枠がぴったりと一致する。林はガラスブロックだけでなく、柱の間隔、棚のサイズ、トイレのタイルに至るまで建物のあらゆるところがモジュールで統一されていることからこの作品を着想したという。"ジャングルジム"や、同様のグリッドでつくられた他の作品の前に立つとレンゾ・ピアノの思考が自分の身体に直接、響いてくるようにも思える。

中野裕介の作品はメゾンエルメスに連なる透明なガラス建築の歴史から生まれたもの。たとえば20世紀初頭のドイツの建築家、ブルーノ・タウトが夢想した「アルプス建築」は、アルプス山頂に計画したクリスタル建築群だ。「都市の冠」は機能を優先するあまり象徴性を失ってしまった都市に、それを取り戻すべく冠のようにかかげる建築が必要、と主張するタウトのいわば都市論である。どちらも当時実現からは遠く、理念上の建築、提唱に終わった。その思想を背景に中野が設置した工事用の仮囲いを使ったインスタレーションの中には何もない。会場に展示された彼のメモには「幻に似た無(=光)に近づく物質」といった言葉が書き込まれている。純粋さを追究していくと無になってしまうのか、そんなことを考えさせられる。

「パラモデル」の「パラ」にはパラダイス、パラドックス、パララックス(視差)などの意味が込められている。二人の世界がパラレルに並ぶ展覧会にも矛盾に満ちた楽園が広がる。

text: Naoko Aono

「パラの模型 / ぼくらの空中楼閣」パラモデル展
〜5月6日
メゾンエルメス8階フォーラム
東京都中央区銀座5−4−1
11:00〜20:00(日〜19:00)
会期中無休
tel: 03-3569-3300

1「パラの図式_#001」
2「巨大な少年の建設計画[頭部]」

2013年 © Nacása & Partners Inc. / Courtesy of Fondation d'entreprise Hermès