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ヴェネチア・ビエンナーレ

ヴェネチア・ビエンナーレ

海に浮かぶ島々でアートと遊ぶ、夏のヴェネチア。

11 7/13 UPDATE

2年に一度開かれる世界最大級の現代美術の祭典、ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展。会場はヴェネチア本島東側のジャルディーニ、アルセナーレと呼ばれるエリアと、市中の各地にあるギャラリー・スペースなど。オープニングにはこれからの現代美術の動向を見定めようと世界中からキュレーターやギャラリスト、コレクターらが集まり、普段から混雑しているヴェネチアがいっそう混み合うことになる。

もっとも優れた作品を見せたアーティストに贈られる金獅子賞を受賞したのは、ドイツ館のクリストフ・シュリンゲンズィーフ。パビリオン内部がまるごと教会に作り替えられ、ガンのため昨年逝去した作家自身のレントゲン写真や、政治的なフィルムなどが投影される。スイス館のトマス・ヒルシュホーンも政治的なモチーフを奥に隠し、大小さまざまなクリスタルが林立するクレイジーなオブジェでパビリオン中を埋め尽くした。束芋は日本館の床に開いている穴を井戸に見立てた映像インスタレーションを設置。フランス館のクリスチャン・ボルタンスキーの作品は鉄パイプの構造体の間を赤ん坊の写真が次々と流れていくというもの。今年で54回目になるヴェネチア・ビエンナーレだが、今回はとくに作品が大型化、観客を飲み込み、中で迷わせるような作品が目立つ。一方で、架空の革命のドキュメンタリーフィルムを見せるポーランド館や、先般のデモで命を落としたアーティストが、デモの映像をもとに製作していた作品を見せるエジプト館など、小粒ながら強いコンセプトを持つ作品も注目を集めた。

ビエンナーレ期間中はヴェネチア市内でもアート・イベントが多数、開催される。ヤン・ファーブルは16世紀の建物でミケランジェロの「ピエタ」を引用した作品を展示。大運河に面した壮麗な貴族の館にドナルド・ジャッド、ダミアン・ハーストらの現代美術を挿入したのはプラダ財団。20世紀初頭のファッション・デザイナー、フォルチュニーの邸宅では1階から4階まですべてのフロアを使って、古い仏像からイリヤ・カバコフなど現代アートが共演する壮大なインスタレーション「TRA」が開かれている。

ヴェネチアでは近年、市内各所にある貴族の館を改修し、サン・マルコ広場に面したコッレール博物館のコレクションを分散させるという試みも行われている。車が使えないヴェネチアで観客は市内を歩き回りながら、それ自体が博物館のような街並みと古代から現代までのアートを楽しめる、という仕掛けだ。他の都市では味わえない、特別にぜいたくな休日が待っている。

text:Naoko Aono

ヴェネチア・ビエンナーレ
開催中〜11月27日まで
ジャルディーニ、アルセナーレ、他市内各所
10時〜18時、月休
入場料20ユーロ
http://www.labiennale.org/en/art/exhibition/54.html

ヤン・ファーブル「ピエタ」
開催中〜10月16日まで
The Nuova Scuola Grande Di Santa Maria Della Misericordia
Sestiere Cannaregio, 3599 30121 Venezia
10時〜18時、月休
入場無料
http://www.janfabre.be/

プラダ財団
開催中〜10月2日まで
Ca' Corner della Regina
Calle de Ca' Corner,
 Santa Croce 2215
Venezia
10時〜18時、火休
http://www.prada.com/fondazione/cacorner/

TRA
開催中〜11月27日まで
Palazzo Fortuny
San Marco 3780, San Beneto, Venice
10時〜18時、火休
入場料 9ユーロ
http://www.tra-expo.com/

1ヴェネチア・ビエンナーレ フランス館
クリスチャン・ボルタンスキー「チャンス」2011年

2ヤン・ファーブル「ピエタ」

3プラダ財団 展示風景