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アジアの交通・経済の要所として発展してきたシンガポール。「シンガポール・ビエンナーレ2011」はそこで開かれている、現代美術の祭典だ。第3回目になる今年のテーマは「Open House」。シンガポール美術館や、使われなくなった旧カラン空港を舞台に約60組のアーティストの作品が展示されている。とくに旧カラン空港での展示はユニークだ。1937年にオープンしたモダニズム建築の建物と、マイケル・リンやエルムグリーン&ドラグセットら、現代美術との対比がおもしろい。
これらのメイン会場とは別に、シンガポールの観光名所、マーライオンもアートにされてしまった。アーティスト、西野達の「ザ・マーライオン・ホテル」は高さ8メートルのマーライオンの上半身を覆う箱を作り、その中に宿泊できるようになっている。オペレーションは現地の一流ホテル「フラトン・シンガポール」が担当。居心地のいいサービスが受けられる。
「シンガポールの歴史を語る上で"港"というキーワードははずせない。マーライオンが立つマリーナ・ベイは、シンガポールを植民地として発展させたラッフルズ卿が上陸した場所であり、シンガポールの歴史と深く関わっている。マーライオンを選んだのはそういった理由から。国のシンボルであるモニュメントを使うことで、普段アートにそれほど興味のない人にも関心を持ってもらえれば、とも考えた」と西野は言う。
室内にはマーライオンの顔の下にベッドが置かれ、迫力ある表情をじっくりと眺められる。海に面したバスルームから波を見ながらバスタブにつかる、というぜいたくも。壁紙のパターンも西野がデザイン。マーライオン、ラッフルズ卿、シンガポールの歴史や経済で大きな役割を果たしている華人を象徴するチャイナタウン、シンガポールの未来を表すマリーナ・ベイがモチーフだ。
「ザ・マーライオン・ホテル」、残念ながら宿泊は予約受け付け開始後1時間で満室になってしまったが、見学は可能。いつもと違うマーライオンが出迎えてくれる。
text:Naoko Aono
シンガポール・ビエンナーレ2011
開催中~5月15日
シンガポール美術館、SAM at 8Q、旧カラン空港ほか
10時~19時(入場は18時15分まで)
入場料10シンガポールドル
(ザ・マーライオン・ホテルの見学は10時~19時、無料)
http://www.singaporebiennale.org/
西野達
「ザ・マーライオン・ホテル」
Commissioned by the Singapore Biennale 2011
Courtesy of the artist and the Singapore Art Museum
ソフィープ・ピッチ
「Compound」2011
Commissioned by the National Museum of Singapore for the Singapore Biennale 2011
Courtesy Sopheap Pich
ジュリアン・ゲーテ
「Extended Bang No 2」2011
Courtesy Julian Göthe