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豊島美術館

豊島美術館

水滴をイメージした美術館で味わう風と水のアート。

10 11/18 UPDATE

地面がそこだけ白くなって盛り上がったような建物。10月にオープンした、「豊島美術館」だ。建物の設計は西沢立衛。今年、建築界のノーベル賞といわれるプリツカー賞を受賞した、建築ユニット・SANAAとしても活躍している。

美術館が建っているのは瀬戸内海の豊島、海のすぐ近くの小高い丘の上だ。棚田の間の道を歩いていくと、白いかたまりが現れる。内部にしつらえられたのは内藤礼が制作した「母型」という作品。建築と一体になっている。床には水滴がころがり、やがて泉を形成する。

建物自体も水滴のような形をした、柔らかいフォルム。天井には大きな穴が2ヶ所、あいていて、中から空や棚田が見える。その穴から風が入ってくると、水滴がわずかに震えて、水たまりに向かって動いていく。開口部にはリボンがつるされ、これも風に揺れる。床には水滴の他、ところどころに小石も見える。この繊細な空間そのものが内藤礼の作品なのだ。内藤礼は豊島近くの直島 でも古い民家を改造した恒久設置の作品(家プロジェクト「きんざ」)をつくっているが、そのこじんまりとしたスケールとは全く違う体験ができる。瀬戸内海 の島で大小二つの内藤作品が楽しめるのだ。

豊島美術館では、耳をすますと木の葉の音や鳥の声も聞こえる。晴れていれば日が差し込み、その光が刻々と移っていくのも眺められる。空間の大きさはおよそ40メートル×60メートル。柱が一本もない室内の天井高は最大で4.5メートル。ごく薄いコンクリートの膜が、ふんわりと地面に置かれたような雰囲気でもある。流れるようなフォルムに視線をすべらせていくと、何かとても大切なものが見えてくるような気がする。

建築家とアーティスト、そして海に囲まれた島の自然との調和が、今まで気づかなかった感覚を呼び覚ましてくれる。

text:Naoko Aono

豊島美術館

香川県小豆郡土庄町豊島唐櫃607
Tel : 0879-68-3555
10:00~16:30(11月1日~2月末日)、
~17:00(3月1日~3月31日)
月・火、12月27日~2011年1月4日休館
入館料 1500円

1豊島美術館
Photo:Naoya Hatakeyama

2内藤礼 「母型」2010年
photo:Noboru Morikawa