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万華鏡の視覚

万華鏡の視覚

ティッセン・ボルミネッサ現代美術財団の
コレクションにみる、幸福なアートの買い方。

09 5/08 UPDATE

投資の対象として買う。ファンド商品にする。こんなアートの買い方もひとつのやり方だけれど、アートの醍醐味はプライスレスな思い出を持てること。美術館で感動した、よくわからないけれど気になる、ある日突然アーティストの意図がわかったような気持ちになる。そんな体験こそがアートと接する喜びの一つだ。

森美術館で開催されている『万華鏡の視覚』という展覧会はオーストリアのティッセン・ボルミネッサ現代美術財団のコレクションを展示するもの。ティッセン・ボルミネッサ現代美術財団はフランチェスカ・フォン・ハプスブルクが2002年に設立した財団。フランチェスカはヨーロッパで代々続くアート・コレクターの家に生まれ、あのハプスブルク家に嫁いでいる。現代美術に多大な関心と愛情を持つ彼女はある時、カナダ出身のアーティスト、ジャネット・カーディフの作品がどうしても欲しくなった。ところがアーティストは個人には自分の作品を売らないという。そこでフランチェスカはカーディフの作品を買うために財団を設立。現在では450点以上もの作品を所蔵している。

フランチェスカのコレクションの特徴はコミッションワークなど、その場所にあわせてアーティストに作ってもらった作品が多いこと。いわば、アートのオーダーメイドだ。アーティストとディスカッションしながら制作を進めていくため、スタートから完成まで1年以上かかることもあるという。
「アーティストやアートといろんな関わり方ができる、とてもハッピーな体験だわ。彼らのクリエイティビティを尊重することで、自分も成長することができる」

もちろん、オラファー・エリアソンやマシュー・リッチーら一流アーティストにコミッションワークを依頼するなどということは誰にでもできる、というわけではないけれど、もしそれだけのお金があるのなら、これ以上幸福な使い方はないだろう。広々とした空に浮かぶ美術館でその幸福のお裾分けにあずかろう。

Text:Naoko Aono

『万華鏡の視覚:ティッセン・ボルミネッサ現代美術財団コレクションより』

開催中〜7月5日
森美術館
東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー54F
10:00〜22:00(火〜17:00)
会期中無休
一般1500円
ハローダイヤル 03-5777-8600


カールステン・フラー
《Y》
2003年
Installation view: Thyssen-Bornemisza Art Contemporary. Collection as Aleph, Kunsthaus Graz, 2008
Photo: Jen Fong Photography / T-B A21, 2008